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こんにちは。アニィです。
さて、連載小説のほうも9日目と言う事で3ヶ月に渡って掲載してきた訳なのですが、今日で第1章が幕を閉じます。小出しに掲載していけばもっと長く掲載する事も出来たのですが、中途半端で終わってしまうと物語が解かりずらくなってしまう事も踏まえ、この連載小説の回だけはかなり長かったので携帯でご覧になっている方にはいささかご迷惑をお掛けした事と思います。それも今回まででございます。正直28日の晩に書き上がったばかりなので、書きたてホヤホヤの最終話、是非ご堪能下さい。

病院に入り剛志の手を握り締めながら時間は緩やかに流れていった。戻ってきて欲しいと言う想いを胸に秘めながらただただ祈る事を止めなかった。早くその目を開いて私にその屈託の無い笑顔を見せて欲しいと…。私は泣いてはいけないと思いながらもその現実を目の当たりにして止めど無く溢れ出す涙を拭いきれずにいた。しかし心は戻ってくる事だけを信じ、たとえ涙が枯れようとも祈り続ける。そう心に言い聞かせ続けた。

気が付いたら時計の針は日付変更線をまたぎ、無情にも結婚式当日となってしまった。私がこの病院に入ってから既に6時間余りが経過していた。私は時間を気にせず必死で祈り続ける。
すると、天に祈りが届いたのだろうか?心に一筋の光が差し込んだ。なんと、剛志の中指がピクッピクッと動いたのだった。私はこの僅かな変化に笑みがこぼれた。今まで涙を流していたのがまるで嘘の様に…。しばらくすると中指だけでは無く全ての指が動き出し、奇跡的にも意識を取り戻したのだ。意識を取り戻した剛志に私は必死で呼びかけこう言った。
「剛志。私、解かる?ちゃんと剛志の目には私が映っている?ねぇ、剛志答えて。」
すると、今までずっと生死の境をさまよっていただろう、剛志が私にこう語りかけてきた。
「薫だろ。ちゃんと見えてるし解かってるから大丈夫だよ。何か薫にすげぇ悪いなぁって思ってる。本当ごめんな。結婚式…。俺こんなんじゃ出れないよな…。」
これが、今まで意識の無かった人間の言うセリフなのか?どんな状態でどんな状況下に置かれても必死になって私だけを見つめてくれている。そんな剛志の心の温かさに今まで止まっていた私の涙腺がまた開き、大粒の涙が滴り落ちた。
「そんな、泣くなよ。薫。俺まで悲しくなるじゃないか。ほら、笑って。薫にはいつも笑顔でいて欲しい。薫を幸せにするってカッコいい事言ったのに…。嘘つきになっちゃうじゃん。」
目の前で涙を流す私を剛志が戒める。私は必死で涙をこらえながら剛志に対し、精一杯の作り笑顔で「ごめんね。大丈夫?」と答えて見せた。すると剛志が続けてこう語った。
「そうだよ。やっぱり俺は薫の笑顔が一番好きだよ。これからもその笑顔を絶やさず俺に見せてくれよな。じゃぁ俺、結婚式に備えてもう一度寝るな。最後に…。ありがとう…。」
そう言うと笑顔で目をつぶった。私は笑顔で「早く良くなってね。」と言ってその時は剛志を休ませようとだけ考えたのだが、それを境に剛志の目は二度と明く事は無かった。

結婚式が一転してお葬式に変わってしまった。私はまだ籍を入れていないので親族では無いのだが、剛志をきちんと送りたいと親族としてお手伝いさせて頂く事を志願し、快く承諾してもらった。そして、初七日が過ぎた時、誠二が私のもとを尋ねてきた。
「薫さん、お疲れ様です。なんか大変な事になっちゃいましたね。本当なんて声掛けていいのか解からないんだけど、実は今日はどうしても伝えなければいけないと思ってここにきました。正直、今でもまだこれを伝えるべきかって悩んではいるんだけど、いつまでも俺が持っていても仕方が無いので、あえて渡しておきます。実は結婚式のサプライズで剛志から薫さんへの手紙を預かってたんだ。でもこれが薫さんの過去に消えない思い出として残るのであれば、薫さん自身新しい道へ進む足枷になるんだとしたら、それは剛志も望まないだろうから封を開けずに捨ててしまって下さい。でも薫さんにとって剛志を良い思い出として心の中に留めるなら、読んでみたらいいんじゃないかな。その判断は薫さんに任せるけど…。とりあえず渡しておくね。」誠二はこう語ると、剛志の残した手紙を私に差し出した。私の考えは後者だ。やっぱり剛志とのかけがえの無い時間はいつまでも心の中にしまっておきたい。そう考えると剛志の残した最後の手紙を何のためらいも無く誠二の前で開封して見せた。
「薫。今日からやっと二人の生活が始まるね。僕は薫をこの生涯を賭けて幸せにしていく事を改めて誓います。これからの生活の中で時にはケンカをする事もあると思う。けれどこれだけは約束して欲しい。僕は薫の喜んだ顔、怒った顔、哀しい顔、楽しそうな顔、そんな喜怒哀楽全てひっくるめて大好きだから、今日のこの日があると言う事忘れないでいて欲しい。僕にこの先どんな事が生じたとしても、いつも笑顔でいて欲しい。これだけは必ず守って下さい。そしてこれから幸せな時間を死ぬまでずっと二人で作っていこう。これからも宜しくね。最後に一つだけ言わせて下さい。薫、本当にありがとう…。」
私はこの手紙を読んだ時に剛志の最後の言葉がこの手紙に重なる不思議な感覚を覚えた。今考えるとあの状況の中で剛志が意識を取り戻したのも最後のこのありがとうと言う言葉を伝えたかったのではないかと。私はもの凄く剛志がいとおしくなり泣きそうになったが、この剛志との約束を守るべく必死で涙をこらえ、ただ笑顔を作る様頑張った。天国の剛志が私の事を心配しない様にと…。

どこまでも続く青く澄んだ空を見上げて、私は大きく深呼吸をした。
「私はもう大丈夫。今日も一日笑顔で頑張るから…。」
私の中の短くて長い貴重な3年間を胸に刻んで、明るく頑張る事が私にとって何より必要な事だと剛志が教えてくれたから…。 この想いが剛志に届く様に…。

第1章 ~ 薫の目線 ~ FIN

どうでしたか、意外といい仕上がりになったのではないかとアニィは自画自賛しております。さてこの連載小説ですが3ヶ月ほど次の第2章の為の充電期間としてお休みさせて頂きますが、予告だけいれておきます。第1章は主人公の薫から見たこの物語と言う言わばベースが出来た訳なのですが、第2章はもう一人の主人公剛志から見たこの物語と言う形で小説を書き上げていきます。この2つの章が重なる事で物語がより深みを帯びてくる形になるのではないかとアニィは思っていますので、期待?して待っていて下さい。
それでは。長々有難うございました。と言う事でアニィでした。

テーマ : 自作連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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