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こんにちは。アニィです。
さてこの連載小説も回を重ねる事7回目となりました。最近では物語の構成もスムーズに描ける様になり、小説らしくなってはきているのかななんて思ったりもしています。皆さんは楽しんで頂けてますか?楽しんで読んで頂けている事を思い描きつつ、早速今回も掲載していきたいと思います。

「お客様、本日はラストまで有難うございました。」
店長が徹也に対し深々と頭を下げた。気が付けば私の仕事が終わる時まで徹也は私の相手をしてくれたのだった。
会計を済ませ、徹也は私にこう語りかけた。
「今日、これから知り合いのLIVEに顔を出すんだ。瀬奈ちゃんも愛ちゃんも誘っているので、薫ちゃんもこの後一緒に行こうよ。剛志は居ないけど誠二は後で来るから。」
私は、瀬奈からも愛子からもLIVEの話は聞いていなかったのだが、今日私にとことん尽くしてくれた徹也に対する御礼の意味合いを兼ねて、徹也の誘いを快く承諾した。

LIVEはどうやら野外ステージらしい。私は野外LIVE自体が初めてだったので色んな意味で興味深々だった。すると、LIVE会場のど真ん中の特等席が私達の為に用意されていた。
LIVE会場は野球場に特設でステージを作った、何とも大掛かりなステージ構成で沢山の仕掛けが隠されている様だった。一つ気になったのは、スタンドや私達の後ろの席は人でごった返しているのにも関わらず、私達の周りには人が居ない。知り合いだとこんな特等席を用意してもらえるんだと関心してしまう程だった。しばらくすると場内の照明が落ち、バラードの素敵な音色が聞こえてきた。ステージにブルーの光が灯り、ステージの暗幕をまるで海の様に染めて
いた。その奥で歌い手のシルエットだけが映し出された。曲はTUBEのプロポーズだった。

この歌は剛志もよくカラオケで歌っていて、私も気に入ってる好きな歌だった。耳を澄まして聴いていくと私の想いが強いのか、なぜか剛志が歌っている様に聴こえてしまうのだった。

♪遠回りばかりしたけれど 思い出と涙の数だけ 幸せにしてあげたい誰より 君をこの手で抱きしめ 守りたい

すると突然演奏が止まり、ステージに掛かっていた暗幕が一気に外れ、海の様に照らし出していたブルーの照明が消え、ステージ上に歌い手が現れた。左右からその歌い手を目掛けスポットライトがゆっくりと歌い手の方に寄ってくる。そのスポットライトが重なった瞬間、私は自分の目を疑った。

なんとその歌い手は、今まで連絡の取れなかった剛志だった。スポットライトの光を一身に浴びた状態で剛志はここの会場に居る観客に向けて語り始めた。
「皆さんこんな僕のワガママに付き合ってくれて本当に有難うございます。ここの会場に残って下さってる皆さんには凄く退屈な時間を過ごさせてしまうかも知れません。ただ今日だけはこの会場に来てる一人の女性に対し僕なりの答えを伝えたい。ただそれだけを考えています。」
私は剛志がなぜステージの上に立っているのかとなぜ私がこの場所に居る事を知っているのかそんな事を考えるだけで頭の中が軽いパニック状態に陥った。私は気が動転している中、周りの仲間の顔をキョロキョロと見渡すと、全員が私に対しまるでドッキリでも仕掛けたかの様に微笑み掛けてきた。どうやらここに居る他の仲間は事態を全て把握している様で、私だけが知らないままここに、まんまと連れてこられた様だった。そんな時私の席を正面のスポットライ
トが照らし出し、この空間で光を浴びているのは私と剛志の二人だけになった。
「薫、辛い想いばかりさせて本当にゴメン。でも今日だけは君にどうしても僕から気持ちを伝えたかったんだ。そしてこの言葉だけは僕の方から伝えなければならないんだ。僕…」
この瞬間に止まっていた演奏が再開し、剛志の前方を覆い被せる様に、ステージの端から端まで、夏の夜空を打ち抜くかの様な噴水が上がり、その上がった噴水の水を全身に浴びながら剛志は最後のサビを熱唱する姿が見えた。その光景は水のカーテンの中で必死に自分自身の想いを伝えようとする心を打つ演出だった。

♪僕よりも僕の事を知ってる 神様よりも君だよ 愛してるなんかじゃ足りない想い カタチにしたくて 約束したくて 君だけに 君だけに 証にしたくて 誓いにしたくて これが僕のプロポーズ

この歌に私への想いを乗せた気持ちの入った熱唱だった。そして前方にいきなり現れた水のカーテンがゆっくりと引き、ずぶ濡れになりながら熱唱した剛志が目の前に現れる。両手一杯に広げたその右の手の平にはエンゲージリングがしっかり握られていたのだった。
「長い間待たせてゴメン。これが僕の薫に対する、今出来る最大の愛情表現です。この想い、受け止めてくれますか?返事は今すぐでなくてもいい。僕の想いを理解してくれてさえいれば今はそれだけで充分だから…。」
剛志の言葉が私の胸の奥にジンジンと響いた。そして、今まで逢えなかった事、サプライズな演出、周りのみんなの応援と気遣い、色々な事が頭を駆け巡り、気がつけば目から拭いきれない程の大粒の涙がこぼれた。するとステージがさらに明るくなり、奥の方からバンドのメンバーが現れた。場内のスタンドを埋め尽くす観衆から津波の様な奇声が上がる中、ボーカルの方がマイクを手に取り語り始めた。
「いやぁ、なんか凄く心に残るイイモノを観させてもらったね。みんな、彼中々歌うまかったでしょう。薫さん…でしたっけ。彼、このステージの為にもの凄く頑張りましたよ。その姿は俺らが心を打たれた位だから。今日の主役は間違いなくあなた達二人だね。結果はどうなるのか判らないけど、今度は僕達から二人の未来と残ってくれたお客さんの為に特別プレゼントとして、何はともあれおめでとう?ミニライブをプレゼントしたいと思います。皆さん準備はいいですか?夜はこれからですよ!」
静まり返り私達の動向を黙って見つめてくれていたスタンドの観衆から歓喜の声が挙がった。
スタンドを埋め尽くす観衆の声は幾重にも重なり、まるでその会場全体が飛び跳ねているかの様な錯覚を起こすほど、場内は沸き上がった。
私の答えは言うまでも無い。それは私自身が一番望んでいた事だから…。こんなに素敵なサプライズの中で私自身の一番欲しかった答えが出た事を今は純粋に噛み締めていたい。そう考えるだけで今の私は充分だった。
こうして私の一生の中に思い出として刻み込まれたサプライズな夜は華やかに終演を迎えた。
会場を埋め尽くす大観衆、そして協力してくれたバンドの皆さんやかけがえの無い私の仲間と共に…。

今回でなんか綺麗にまとまった様に見えますが、物語はまだ終幕を迎えません。と言う事はこの後のストーリーの中に変化があると言う事を想像させてしまうかも知れませんが、まぁそれはご覧になって確認する様にして下さい。そうじゃないと連載小説の意味合いが無くなってしまいますからね。と言う事で今回はここまで。次回9月18日にまたお会いしましょう。
それでは。アニィでした。

テーマ : 自作連載小説 - ジャンル : 小説・文学

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